「世界一訪れたい日本のつくりかた」デービッド・アトキンソン著 感想とレビュー

「日本には、『世界一訪れたい国』になるためのポテンシャルがある。」

この本の著者であるデービッド・アトキンソン氏は、元ゴールドマン・サックスの英国人アナリストであり、国宝や重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社の代表取締役社長。

外国人としての視点や、日本の伝統文化を守る立場から、日本が今後「観光立国」として発展していくための、提言を行っています。

日本でも近年注目されるようになった「インバウンド」や「観光業」ですが、市場規模・成長性ともに、今後人口減少や高齢化に直面していく日本にとって、国の産業を維持・拡大していくための、超有望産業

デービッド・アトキンソン氏は、日本は観光立国として成功するための条件を全て満たしている世界でも稀有な国で、「やるべきこと」をきちんとやれば、

現在政府が掲げている、2020年に訪日客数4000万人、2030年に6000万人という目標は軽々とクリアできるだけではなく、世界中の人にとっての「世界一訪れたい国」になることもできる、と説いています。

その上で、日本の観光業の現状の課題と改善点を指摘し、日本が目指すべき道筋を示しているのが本書の内容です。

私自身、日本は観光資源の宝庫だと感じるし、世界中の人に日本の魅力を楽しんでもらい、それが結果的に産業の発展や、豊かな社会が維持されることに繋がれば嬉しいと思っています。

今回の記事では、私が特に重要と感じたポイントについて紹介していきたいと思います。

 

目次

観光業は日本にとっての超有望市場

 

あまり知られていませんが、実は観光業というのは、世界のGDPの約10%を占める一大産業です。

これは、エネルギー、化学製品に次ぐ、世界第3位の規模を誇ります。

世の中の11人に1人は、観光業に従事しています。

しかも、これだけの規模がありながら、ものすごいスピードで成長している市場です。

世界の観光客数は2015年には11.9億人に登りました。

2030年の世界の人口は85億人になると見込まれていますが、この時には約18億人、つまり世界の5人に1人は海外旅行をする「大旅行時代」時代になると予想されています。

この大きなビジネスチャンスを、日本としても取り逃がす訳にはいきません。

日本の訪日外国人数は右肩上がりに伸び続け、2007年には800万人だった訪日外国人は、2018年には3119万人と、約4倍まで増加しました。

政府は、2020年に4000万人、2030年に6000万人を目指しています。

高齢化と人口減少の問題を抱える日本にとって、年間6000万人もの新規顧客が訪れ、日本で消費活動をしてくれることは、経済的にも大きな支えになります。

日本の恵まれた観光資源を活かし、世界中の人が訪れたくなる魅力溢れる国を作っていくことが、日本の豊かな未来に直結します。

 

日本は観光立国になるための条件を全て満たした稀有な国

 

デービット・アトキンソン氏によると、観光立国になるための4条件は、「自然・気候・文化・食」の4つです。

世界には色々な国がありますが、日本は4つ全てに恵まれた世界でも珍しい国です。

山や海、川、田舎の田園風景など美しい自然に溢れていますし、穏やかで快適に観光を楽しめる気候に恵まれています。

四季折々で表情が代わり、同じ日本国内でありながら、北海道のウインタースポートから、沖縄のマリンアクティビティまで、様々な楽しみ方ができますね。

日本の歴史、習慣、建物、服装、音楽や伝統工芸、食文化に漫画やアニメなどのサブカルチャーまで、日本ならではの文化の宝庫ですし、

世界遺産に登録された和食は、世界のどこの国に行っても、興味を持たれている料理の一つだと感じます。

世界中からの観光客のあらゆるニーズに応え、満足度の高い滞在体験を提供できる素養は、十分すぎるくらいにあると思います。

 

現在の日本の観光業における課題

 

観光資源には恵まれているものの、現在の日本の観光産業には多くの課題があります。

✔︎ せっかくの観光資源を活用しきれていない。

✔︎ 海外からの観光客が来ることを前提に施設やサービスが作られておらず、発想の転換が必要。

✔︎ 中国・韓国など近隣国からの訪日客が多いため、消費額が少ない。単価の高い遠方からの長期滞在客の誘致が課題。

大きくまとめると、この辺りが重要課題だと感じます。

 

そもそも日本の観光業は、人口増加に合わせて市場が拡大し続けていた時代には、日本人客だけでも十分ビジネスが成り立つ売り手市場だったため、海外からの旅行客を積極的に取り込むという努力はしなくとも、操業していくことが可能でした。

海外からの訪日客が増え始めたのも、この10年ちょっとの間です。

日本の観光業の独特なスタイルの一つに、供給側がお客さんに対してルールを決めるところがあります。

「夕食は大広間で7時からになります。」

「門限は12時ですので、それ以降の外出はお控えください。」

「連休中の食事のメニューは、こちらのコースのみになります。」

例えば旅館やホテルなどで、このように供給側がお客に対してルールを提示するのは、海外ではあまり見られない独特のものです。

このようなスタイルは、大人数での社員旅行や、質より量のマス的なサービスを提供していれば良かった時代には通用しても、海外からのお客さんを相手に、一人一人の満足度を上げ、リピーターを獲得することが必要なこれからの時代にはそぐわない

これまでとは、発想の転換が必要な局面にきていると感じます。

また、現在の訪日外国人の7割が、中国・韓国・台湾・香港からの旅行者で、単価の高い欧米からの旅行客を獲得できていないことも大きな問題点です。

世界全体では欧州が最も多くの海外旅行者を抱えているにも関わらず、日本が取り込めているのはごくわずか。同じアジア圏のタイにも負けてしまっています。

ビジネスにおいては、単価の高い上客のリピーターを獲得することが最重要にも関わらず、海外からの富裕層や、旅行先での消費金額の大きい欧米の旅行客を取り込めていない背景としては、様々な問題があります。

✔︎ 富裕層向けの高級ホテルがないため、富裕層が日本にこれない

✔︎ 欧米(特に最も海外旅行者数が多いドイツ)向けに、日本に誘致するような情報発信が少ない

✔︎ 外国語での情報発信が少なく、国内での外国語対応も進んでいない(英語での表記があまりない、もしくは間違いだらけで明らかに力を入れられていないとわかる)ため、日本人から歓迎されていないと感じている。

(実際観光地でのパンフレットの英語表記だけでは、せっかく訪問しても、面白さが伝わらないだろうなと感じるものが多い。)

✔︎ 海外からの旅行客を長期滞在させるためのコンテンツが不足している

✔︎ 交通費が高い。にも関わらず、高い交通費をかけてたどり着いた場所の宿泊設備がしょぼい。

単価を上げて、一人一人に満足度の高い体験を提供すること、その上で適切な情報発信をして遠方からの旅行客を誘致していくことが、今後日本が観光立国になっていく上で重要な課題だと思います。

 

これから日本がやるべきこと

 

①単価が高く、顧客満足度の高いサービスを提供することで、高単価のリピート客を獲得する

 

「量より質」に発想を切り替え、一人一人の顧客の満足度を最大化するためのサービスを整えることが重要

(日本人の考えるおもてなしと、海外の人が考える「良いサービス」は実際かなり乖離があり、この点については、顧客目線でサービスを相手に合わせていく必要がある。)

日本の観光資源を活用し、楽しんでもらえるためのコンテンツ作りや整備

(資源の中でのアクティビティをして、長期滞在できるようなパッケージを考える。寺院の案内パンフレットを、海外の人が見ても面白いと感じられるように、多言語で丁寧に対応する。)

高級ホテルなど、高所得者向けの宿泊施設の整備と、上客向けの差別化したサービスの提案

(海外の富裕層が安心して泊まれるような高級ホテルやスイートルームを作る。お金を払えば、桜の時期や、築地のせりなどに、渋滞に並ばずとも優先的に観光を楽しめるような、差別化した仕組みを作る。)

 

②欧米からの遠距離客への情報発信を強化することで、日本へ興味を持ってもらい、訪日客を増やす。

 

まだまだ、欧米向けに日本への観光旅行を促すような情報発信は不十分。相手の気持ちになって、日本への興味を持ってもらうためのアピールを、コンテンツや施設の拡充と平行して行っていく必要があります。

 

著者自身が外国人ということもあり、日本人には持ちづらい外部からの視点で、日本の観光業の課題を指摘してくれており、観光業に携わる全ての人にとって役立つ内容だと思いました。

私自身、今後の日本にとって、観光業が重要な事業分野であることは間違いなく、このチャンスをどれだけ取り込むことが出来るかは、私たち自身の姿勢や取り組みで大きく変わってくると感じました。

インターネットのビジネスに携わる一人として、日本の魅力を海外に発信し、日本経済の発展に少しでも貢献できるような仕事をしていきたいと、改めて感じました。

大変勉強になる本だったので、ご興味がある方は是非読んでみてください。

 

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私は、大手商社を退職後、年収5億円の25歳起業家に弟子入りし、ウェブマーケティングを学びました。
 
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